もっと ちゃんと 君 を 見 て れ ば もっと ちゃんと っ て。 たばこ/コレサワ (Covered by あさぎーにょ)

たばこ/コレサワ (Covered by あさぎーにょ)

もっと ちゃんと 君 を 見 て れ ば もっと ちゃんと っ て

あなたと手をつないで プロローグ 君はさ。 ちゃんと幸せになりなさい。 涙の色 君の大きな目は涙の色に濡れていた。 潤んで、とても大きな悲しみに支配されていた。 でも、そんな君の瞳の色は、とても透明で、とても綺麗に輝いて見えた。 そこには(ずっと昔に)私が無くしてしまった、なにかとても大切なものがあるような気がした。 ……それはまるで、私のずっと昔に、どこかに置き忘れてしまった、(なにをなくしてしまったのか、もう忘れてしまったけど)とても大切な忘れ物のようだった。 本編 生きていくこと。 これからも、……生きていくこと。 ……もっとたくさん、ちゃんとお話をすればよかったね。 私たちはさ。 お姉ちゃんが亡くなったのは、去年の夏のことだった。 お姉ちゃんは病院で亡くなった。 とても重い病気で、十七歳で病気が発覚して、それから一年くらいずっと消毒液の匂いがする(私があまり行きたくない場所であった)病院の中に入院をして、個室の病室の中で亡くなったとき、お姉ちゃんは十八歳だった。 (そして、私は十六歳だった) 「志帆。 お姉ちゃんのお墓参りに行くよ」とお母さんが優しい顔をして志帆に言った。 「うん。 わかった」そう言って志帆は出かける準備をする。 季節は夏。 蝉がみーん、みーんととてもうるさく鳴いていて、太陽が眩しいくらいに輝いているとても暑い夏の日。 空は真っ青。 透き通るくらいに綺麗な青。 なんだかそんな色を見ていると、ちょっとだけおかしくて笑えてくる。 (だってそんなに綺麗な色がこの世界の中にあるなんて、とても不思議だったから) 志帆はお母さんの車に乗って、家の近くにある家族のお墓まで移動をする。 その志帆の家のお墓には、先祖の名前に混ざって、一番新しいところに、お姉ちゃんの名前ものっている。 『大村麻衣 享年 十八歳』 志帆はお姉ちゃんの名前を見ても泣かなかったけど、お母さんはいつものようにお姉ちゃんの眠っているお墓の前で泣いていた。 なるべく、声を出さないように、ただ静かに泣いていた。 お花を飾って、お線香をあげて、お墓をタオルで掃除して、墓石に水をかけて、……両手を合わせてお祈りをして、……とそんなことをしている間、志帆は、今日は本当に暑いなとか、蝉が本当にうるさいな、とか、焼け付くように照りつける真夏の太陽の光の中で(周囲にはぼんやりと陽炎のようなものまで発生しているようだった)ただそんなことをずっと頭の中で考えていた。 お墓から家に帰るとき、ある一人の高校生と志帆とお母さんはすれ違った。 高校の制服を着た女子高生。 年齢は志帆と同じくらいか、あるいはちょっと大人びているので少し先輩に見える。 長い黒髪をしたとても綺麗な人だった。 その人は志帆と志帆のお母さんに軽く頭を下げて、(志帆たちも頭を下げて、挨拶をした)それから自分の家族のお墓の前だと思われる場所に立って、そこからぼんやりと、歩きながら時折、後ろを向いている志帆の視界から見えなくなるまで、ずっとそのお墓の姿を眺めていた。 「……さっきの人、なんだかお姉ちゃんにちょっとだけ似ていたよね」と冷房の効いた涼しい車の中でシートベルトをしているときに志帆は言った。 「うん。 似ていた」車を発車させながら、志帆を見ないままで、お母さんがそう言った。

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1 君はさ。ちゃんと幸せになりなさい。

もっと ちゃんと 君 を 見 て れ ば もっと ちゃんと っ て

あなたと手をつないで プロローグ 君はさ。 ちゃんと幸せになりなさい。 涙の色 君の大きな目は涙の色に濡れていた。 潤んで、とても大きな悲しみに支配されていた。 でも、そんな君の瞳の色は、とても透明で、とても綺麗に輝いて見えた。 そこには(ずっと昔に)私が無くしてしまった、なにかとても大切なものがあるような気がした。 ……それはまるで、私のずっと昔に、どこかに置き忘れてしまった、(なにをなくしてしまったのか、もう忘れてしまったけど)とても大切な忘れ物のようだった。 本編 生きていくこと。 これからも、……生きていくこと。 ……もっとたくさん、ちゃんとお話をすればよかったね。 私たちはさ。 お姉ちゃんが亡くなったのは、去年の夏のことだった。 お姉ちゃんは病院で亡くなった。 とても重い病気で、十七歳で病気が発覚して、それから一年くらいずっと消毒液の匂いがする(私があまり行きたくない場所であった)病院の中に入院をして、個室の病室の中で亡くなったとき、お姉ちゃんは十八歳だった。 (そして、私は十六歳だった) 「志帆。 お姉ちゃんのお墓参りに行くよ」とお母さんが優しい顔をして志帆に言った。 「うん。 わかった」そう言って志帆は出かける準備をする。 季節は夏。 蝉がみーん、みーんととてもうるさく鳴いていて、太陽が眩しいくらいに輝いているとても暑い夏の日。 空は真っ青。 透き通るくらいに綺麗な青。 なんだかそんな色を見ていると、ちょっとだけおかしくて笑えてくる。 (だってそんなに綺麗な色がこの世界の中にあるなんて、とても不思議だったから) 志帆はお母さんの車に乗って、家の近くにある家族のお墓まで移動をする。 その志帆の家のお墓には、先祖の名前に混ざって、一番新しいところに、お姉ちゃんの名前ものっている。 『大村麻衣 享年 十八歳』 志帆はお姉ちゃんの名前を見ても泣かなかったけど、お母さんはいつものようにお姉ちゃんの眠っているお墓の前で泣いていた。 なるべく、声を出さないように、ただ静かに泣いていた。 お花を飾って、お線香をあげて、お墓をタオルで掃除して、墓石に水をかけて、……両手を合わせてお祈りをして、……とそんなことをしている間、志帆は、今日は本当に暑いなとか、蝉が本当にうるさいな、とか、焼け付くように照りつける真夏の太陽の光の中で(周囲にはぼんやりと陽炎のようなものまで発生しているようだった)ただそんなことをずっと頭の中で考えていた。 お墓から家に帰るとき、ある一人の高校生と志帆とお母さんはすれ違った。 高校の制服を着た女子高生。 年齢は志帆と同じくらいか、あるいはちょっと大人びているので少し先輩に見える。 長い黒髪をしたとても綺麗な人だった。 その人は志帆と志帆のお母さんに軽く頭を下げて、(志帆たちも頭を下げて、挨拶をした)それから自分の家族のお墓の前だと思われる場所に立って、そこからぼんやりと、歩きながら時折、後ろを向いている志帆の視界から見えなくなるまで、ずっとそのお墓の姿を眺めていた。 「……さっきの人、なんだかお姉ちゃんにちょっとだけ似ていたよね」と冷房の効いた涼しい車の中でシートベルトをしているときに志帆は言った。 「うん。 似ていた」車を発車させながら、志帆を見ないままで、お母さんがそう言った。

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たばこ/コレサワ

もっと ちゃんと 君 を 見 て れ ば もっと ちゃんと っ て

あなたと手をつないで プロローグ 君はさ。 ちゃんと幸せになりなさい。 涙の色 君の大きな目は涙の色に濡れていた。 潤んで、とても大きな悲しみに支配されていた。 でも、そんな君の瞳の色は、とても透明で、とても綺麗に輝いて見えた。 そこには(ずっと昔に)私が無くしてしまった、なにかとても大切なものがあるような気がした。 ……それはまるで、私のずっと昔に、どこかに置き忘れてしまった、(なにをなくしてしまったのか、もう忘れてしまったけど)とても大切な忘れ物のようだった。 本編 生きていくこと。 これからも、……生きていくこと。 ……もっとたくさん、ちゃんとお話をすればよかったね。 私たちはさ。 お姉ちゃんが亡くなったのは、去年の夏のことだった。 お姉ちゃんは病院で亡くなった。 とても重い病気で、十七歳で病気が発覚して、それから一年くらいずっと消毒液の匂いがする(私があまり行きたくない場所であった)病院の中に入院をして、個室の病室の中で亡くなったとき、お姉ちゃんは十八歳だった。 (そして、私は十六歳だった) 「志帆。 お姉ちゃんのお墓参りに行くよ」とお母さんが優しい顔をして志帆に言った。 「うん。 わかった」そう言って志帆は出かける準備をする。 季節は夏。 蝉がみーん、みーんととてもうるさく鳴いていて、太陽が眩しいくらいに輝いているとても暑い夏の日。 空は真っ青。 透き通るくらいに綺麗な青。 なんだかそんな色を見ていると、ちょっとだけおかしくて笑えてくる。 (だってそんなに綺麗な色がこの世界の中にあるなんて、とても不思議だったから) 志帆はお母さんの車に乗って、家の近くにある家族のお墓まで移動をする。 その志帆の家のお墓には、先祖の名前に混ざって、一番新しいところに、お姉ちゃんの名前ものっている。 『大村麻衣 享年 十八歳』 志帆はお姉ちゃんの名前を見ても泣かなかったけど、お母さんはいつものようにお姉ちゃんの眠っているお墓の前で泣いていた。 なるべく、声を出さないように、ただ静かに泣いていた。 お花を飾って、お線香をあげて、お墓をタオルで掃除して、墓石に水をかけて、……両手を合わせてお祈りをして、……とそんなことをしている間、志帆は、今日は本当に暑いなとか、蝉が本当にうるさいな、とか、焼け付くように照りつける真夏の太陽の光の中で(周囲にはぼんやりと陽炎のようなものまで発生しているようだった)ただそんなことをずっと頭の中で考えていた。 お墓から家に帰るとき、ある一人の高校生と志帆とお母さんはすれ違った。 高校の制服を着た女子高生。 年齢は志帆と同じくらいか、あるいはちょっと大人びているので少し先輩に見える。 長い黒髪をしたとても綺麗な人だった。 その人は志帆と志帆のお母さんに軽く頭を下げて、(志帆たちも頭を下げて、挨拶をした)それから自分の家族のお墓の前だと思われる場所に立って、そこからぼんやりと、歩きながら時折、後ろを向いている志帆の視界から見えなくなるまで、ずっとそのお墓の姿を眺めていた。 「……さっきの人、なんだかお姉ちゃんにちょっとだけ似ていたよね」と冷房の効いた涼しい車の中でシートベルトをしているときに志帆は言った。 「うん。 似ていた」車を発車させながら、志帆を見ないままで、お母さんがそう言った。

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